3ヶ月目
要約
私の配属先は、SUVA SANGAM COLLEGEという、インド系の中高等学校である。Principal(校長)の人柄は、周りからも尊敬をされており、私も尊敬している。何より、この学校をより良くしよう、という思いがいつも感じられる。Vice Principal(副校長)は、日本でいう生徒(生活)指導担当も担っており、生徒に厳しい。しかし、教員には優しく、
私には、何か困ったことがあったらいつでも言って欲しい、といってくれる。カウンターパートは彼も生徒には厳しいが、いつも私のことを気にかけてくれる。生徒達は、落ち着きがない面は目に付くものの、明るく親切で、私の充実している日々の源である。私は、この学校へ来ることができてよかった、と(少なくとも今は)思っている。これらの人々に囲まれながら現在は、1クラスの授業と5クラスのTTを行っている。その中で見えてきた課題は幾つかある。今後は上記に加え、授業研究プロジェクトとの連携を図りながら、これらの課題にも取り組んでいきたい、と考えている。
フィジーへ来てもう3か月たったか、これが現在の感想である。それだけ充実した日々を過ごしているといえると思う。これは周りの見えるところ見えないところでの支えがあってのことであるのは言うまでもない。これから先、山あり谷ありだろうが、感謝の気持ちを忘れずに活動にあたっていきたい。
1.活動地域及び配属先の概要
(1)活動地域概要・・・配属先は、フィジーの首都スバからバスで約30分のところにあるSUVA SANGAM COLLEGEである。Form3からForm7
(日本の中学3年から高校4年生)まで全18クラス、約700名の生徒が在籍している、インド系の中高等学校である。在籍生徒の多くはフィジー系とインド系のフィジー人で、韓国籍、中国籍の生徒も併せて20名近く在籍している。校内に寺院を抱えている。
(2)配属先の事業内容、組織体制(人員配置状況)・・・教員は全員で40名おり、Principal(校長)、Vice Principal(副校長)、Assistant Principal(助校長)が各1名ずついる。また、教科ごとに、HOD(Head of Department、教科主任)がいる。印刷物がある場合は、このHODに言わなければ印刷ができないなど、ある程度強い権限を持っている。数学科には私を除いて8名の教員がいる。昨年度に比べ、教員数は減少している。
2.所属する部局の概要
(1)事業内容及び課題:一人の教員が受け持つ授業数は、週に30前後(1授業30~40分)である。学校の課題は様々あるだろうが、一つはシラバスの縛りがきついことである。例えば、実際に私は教科書で40ページの範囲を8コマで授業しなければならなかった。これは日本での授業内容の2倍以上にあたる。復習をする余裕はなく、
ただシラバスをこなすことを考えなければならない。また、毎年の大幅な人事異動も問題かと思われる。Principal、Vice Principal、カウンターパートを含む多くの人は、今年新しく来られた教員である。これでは、新しい取り組みを始めたとしても根付きにくい。
(2)同僚の人数、及び技術レベル:数学科には私を除いて8名(うち1名はVice Principal)の教員がいる。この8名のうち5名は、他教科も教えている。数学科HODは、まわりの教師からも生徒からも信頼されており、適切な人物が担っているといえる。このHODの授業は丁寧で、生徒もよく理解しているように思う。しかしその一方で、平気で間違ったことを授業で教えてしまっている教師もいる。
3.配属先のニーズ
数学の授業を行う。チームティーチングを行う。授業研究プロジェクトと連携し、このプロジェクトの実施のための側面支援を行う。カウンターパート、HODとともに、授業計画策定も行っていく。赴任当初から、Principalやカウンターパートからは、数学の授業をもつことや、日本の文化の紹介などを通じて、生徒や保護者に近いところで接して欲しいと言われてきたので
、学校からはマンパワーとして期待をされているように思う。自分自身も、数学科の教師としての配属であるから、数学について取り組んでいくことは言うまでもないが、今までの日本での経験を少しでも活かして、数学の教師、の前に一人の教師としてありたいと思う。そして、何かしらの精神的刺激を先生方や生徒達に与えられたら、と考えている。
4.活動計画準備状況
配属となったのがTerm1(1学期)の残り3週間、という途中であったので、この3週間はカウンターパートを含め多くの先生方の授業の見学をさせていただいた。これは、日本とは異なるフィジーの学校スタイルを知る、良い勉強となった。またそれと並行して、Term2から私も授業を行っていくことや、カウンターパートが指導しているクラス以外の他の先生の授業にも、TTとして入り込み授業を行わせていただくことを確認した。実際Term2からは、1クラスの授業を受け持ち、5クラスのTTを行っている。今後は、授業研究プロジェクトの側面支援をスタートしていきたいと考えている。ただ、先生方に時間的な余裕がないためか、教科の打ち合わせや会議というものが全くない。したがって、上記の側面支援をスタートしていくためには、カウンターパート、HODと中心になり、時間的なこと、会議の内容等も含めて、最初から考えていかなければならない。継続的な取り組みこそが大切だと思うので、形だけでない中身と意味のあるものになるよう、焦らずじっくりと取り組んでいきたい。
5.フィジーの印象
学校からの帰り道、歩いていると前に車いすの男性がいた。ちょうど上り坂だったので手伝おうかと思っていると、道の反対側から知りあいでもない人がわざわざ渡ってきて手伝っていた。学校でも、生徒のノートやコンパスなどの荷物を持っていると、生徒達がすぐに手伝う旨を言ってくれる。最初に感じたフィジーの印象は、優しさや思いやりを持った人が多いということである。しかもそれが当たり前で裏がない。また、挨拶と笑顔にも溢れている。歩いていると、多くの人が挨拶してくれる。とても気持ちの良い生活を送ることができる。フィジーは3年前にクーデターが起こり、現在も軍事政権下にある。しかし、普段の生活でそのことを感じることはなく、特に首都スバは、大体の物が揃い、時々停電や断水などがあるが、交通の便なども含め、不自由を感じることはない。しかし、それであるが故の問題もあり、生徒を含む多くの人々が携帯電話を持ち、娯楽もそれなりに存在する。そのことがこの地域の学校生活にも、例えば落ち着きがないなどの影響を与えている、と話している先生がいた。この辺りは日本と同じような問題を抱えているといえる。