授業研究

フィジーの数学教育の現状を鑑みたとき、様々な問題点を肌で感じ取ることができる。
私が特に感じたことは、生徒の学力向上のためには、まず教師サイドの指導力の向上が必要、ということである。そこで私が特に力を入れたのが、「授業研究」への取り組みである。授業研究とは、教師が、同僚教員と協働してお互いの授業を批判や検討し合うことで、その改善を漸進的に自ら図っていく研究手法のことである。(授業参観をイメージしてもらうと分かりやすいと思う。)主に、教材研究(目的目標に合った教材開発や授業の準備計画、指導案づくり等)と研究授業(実際の授業の実施)と授業検討会(評価会、反省会)から成り立つ。その研究授業とは、よりよい授業のあり方を求めて、研究的実験的に行う授業のこと。具体的には、①誰かに見てもらい、批判や指導、助言を受け、授業の改善に資しようとしておこなう。②集団として共同で授業研究を行う、またその研究の素材提供の意味で行う。③新しい教育方法を実験的に取り入れて、その効果を試すために行う。④優れた授業者や先輩、権威者が、後進を指導する目的で演示する。などがある。フィジーにおいては、特に①と②が中心になる。

校内での研究課題を、先生方との話し合いの結果「生徒中心の授業」に定め、授業研究を行ってきた。これは普段の現地の先生方の授業が「チョーク アンド トーク」に代表されるような教師中心の授業で、数学の面白さや解く喜びなどを感じる場面が少ない、また興味や関心を高める授業が少ない、と感じたからである。本校ではこの授業研究を、一年間、全教員で計8回行ったが、先生方からも好評であった。発表が好きでまた得意のフィジー人(特にインディアン)にとって、授業研究は良い方法だったと感じている。また行ってみて気付いたことは、彼らは客観的に自分の良い点をすでに理解している、ということである。改善すべき点を指摘されると、言い訳のようなことを言うこともあるが、案外素直に耳を傾ける場面も多かった。回を重ねていくと、以前に行った先生の授業研究での反省点(例えばコーラスさせているなど)が見られない先生もおり、やはり他の先生の授業を見ることも良いことだと感じた。この授業研究という取り組みは、フィジーでは今までには無かった取り組みで、100点満点とまでは行かないまでも、少なくとも本校の先生方にとっては有意義なものであったといえる。

また8月のワークショップ内では、本校の数学科の先生方全員でこの1年間の研究授業の取り組みの発表を行った。授業研究というものは早急に大きく効果を齎すものではなく、地道に取り組み、いつの日か気が付くと指導力が向上していた、というものであろう。したがって、今後長いスパンで取り組んでいく必要がある、と考える。
もうひとつ力を注いだのが、公開授業である。これは9月24日に、本校で私の前年度のカウンターパートが行なった。今年度のカウンターパート(HOD)が公開授業後の研究協議の司会進行を行い、教育省の方に助言者として指導助言を仰いだ。参加して下さったパイロット校6校の先生方、ボランティア、本校の数学教員、計23名での議論は、よくありがちな「ありがとうございました」や「良かったです」ではなく、ポイントを幾つかに絞り進められていった。

実は私は、本校で授業研究を行なっていた後半あたりから、この授業研究を私のサポートなしで現地の先生方自身の力で取り組めるのではないか、と考えるようになった。そこでこの公開授業については、私はレター出し交渉と助言者の方との打ち合わせ、受付、ビデオ係を行い、授業者の選考、指導案のチェック、印刷、授業、研究協議の司会進行、書記、助言者、その他すべてを現地の先生方で行うことができないか企画した。当然フィジーにおいて初めての授業研究や公開授業であるから、分からないことや抜けてしまう部分も出てくるだろうから、ある程度のサポートは必要である。ただやはり、彼らが彼らの力でお互いに切磋琢磨することが、本校やパイロット校全体の、将来的にはフィジー全体の指導力向上に繋がると考え、9月24日に予定していた公開授業をそれに充てることを計画した。助言者との打ち合わせ、レター出し、当日の受付、ビデオ撮影、は私が行ったが、他のこと、例えば日程計画、指導案チェックはカウンターパートが中心に、会場準備等は数学教員全員で、授業者、反省会の司会進行、書記もボランティアではなく現地の先生方だけで行うよう計画した。また、事前研修として日本の授業研究のDVDを借り、本校の先生方と一緒に観る勉強会を開いた。当日の反省会での議論も、初めてにしては漠然とした話し合いではなくポイントごとの話し合いができており、意義深いものになったと思う。

もし今後、この公開授業がパイロット校内でまたパイロット校を中心にして他の学校へも波及していくことを考えるときに、今回の公開授業が足がかりとなるのではと期待している。今の段階での新たな課題は、授業研究にしても公開授業にしても、実施計画、準備、等、実際の実施の中でもっと精選していく必要がある、と感じている。先生方の負担をできるだけ少なくし、且つ効果のあるフィジー流の授業研究というものがどういったものなのか、を探っていく必要がある。

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